統合失調症のお仕事あるある
今回は、統合失調症の方のお仕事に関する「あるある」をご紹介します。
統合失調症とは
統合失調症とは、精神疾患のひとつであり、脳の様々な働きをまとめることが難しくなるため、幻覚や妄想などの症状が起こる病気です。100人に1人が発症すると言われており、原因はまだ完全には解明されていませんが、脳の神経伝達物質の異常や遺伝的な要因などが関与していると考えられています。一般的に青年期から成人期にかけて発症することが多く、中にはそれ以降に発症するケースもあり、その症状は様々です。
統合失調症の症状
統合失調症の症状は大きく分けて、陽性症状、陰性症状、認知機能障害の3つに分類されます。
①陽性症状:実際には存在しないものを感じたり(幻覚)、誤った信念に固執したり(妄想)することが含まれます。
②陰性症状:感情表現の減少や社会的な関与の減少などがあり、生活の質に影響を及ぼします。
③認知機能障害:注意力や記憶力、判断力、対人関係にも影響を及ぼします。
▼認知機能障害についてはこちら
【認知機能】精神疾患で低下しやすい9つの機能 – 就労移行支援と企業向けメンタルヘルスサービスを提供しています – ワンモア
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社会認知ってどういうもの? – 就労移行支援と企業向けメンタルヘルスサービスを提供しています – ワンモア
お仕事に関するあるある
では、お仕事をする中でどのような症状が出て、困難さを感じるのでしょうか。ここでは、統合失調症の方が仕事でよく直面する困りごととその対処法についてご紹介します。
①仕事に集中できない
例)業務中に他人の声(幻聴)が聞こえ、手が止まってしまう
陽性症状である幻聴や妄想により、仕事に集中できないということがあります。常に誰かに見られている感じや、周囲から悪口を言われているなどの妄想が出てくると、作業に身が入らず、生産性が低下することがあります。
対処法
お薬で症状をコントロールすると良いでしょう。診察の際に、病状や体調を正しく伝え、主治医と相談しながら調整してもらいましょう。また、ストレスが原因で幻聴が出ている場合は、小休憩を取ると落ち着くこともあります。
②疲れやすい
例)期限に追われると不安が高まり、仕事のパフォーマンスが低下する
症状によって常に緊張している状態が続いたり、気力が落ちていたりプレッシャーを感じながらも無理に頑張ろうとしてしまうことで、通常よりも疲れやすくなります。
業務に集中しようと思っても、無気力状態の自分を奮い立たせるにはとてもエネルギーが必要になります。また、周囲と比べて劣等感を抱き、発症前の出来ていた頃の自分と比較して自分には価値がないなどと思ってしまうと、より疲れを感じやすくなるでしょう。
長期的なストレスによって、身体的・精神的な疲労が蓄積し、バーンアウト状態(燃え尽き症候群)になることがあります。
対処法 上司に業務量について相談し、定期的に小休憩をはさみながら業務に取り組むといいでしょう。不調時のサイン(炭酸飲料をよく飲むようになる、頭痛がする、集中できなくなる…など)を振り返っておき、そのサインが出た時や普段よりも少し頑張りすぎているなと感じたら、休むことも大事です。栄養のある食事や睡眠をしっかりととり、リラックスできる環境を作りましょう。
③混乱しやすい
例)複数の業務があると、何から手をつけていいか分からない
認知機能障害の症状でも挙げましたが、集中し続けることが困難だったり、言われた指示を忘れてしまったり、見通しを立てて仕事に取り組むことが難しいため、ミスが出てしまったり、仕事を進める上でうまく優先順位をつけられず困ってしまうこともあります。
対処法 今、任されている業務を書き出し、優先順位(緊急度・優先度)を立ててみて、上司に確認をしてもらいましょう。言われた指示は忘れないように、ToDoリストに追加して終わったら消すなど進捗状況が一目でわかるように工夫してみるのもいいでしょう。
④本人の頑張りが伝わらず、評価されにくい
本人は真面目に取り組んでいるのに、周囲からみると「サボっているのではないか」「なぜ指示通り動けないのか」などと思われてしまうことも少なくないでしょう。また、統合失調症というだけで、周囲から偏見を持たれることもあるでしょう。
対象法 統合失調症といっても、症状は様々です。自分の特性について知っておき、上司に共有しておくといいでしょう。月日が経つと上司の方も忘れてしまうことも多いので、定期的に症状の共有をされている方もいらっしゃいます。
業務を自己流で進めてしまいがちな方は、作業手順や取り組み方について確認や質問をしながら周りとズレた認識になっていないか確かめてみるのもいいですね。
もしうまく自分のことが伝えられないという方は、職場の産業医やカウンセラー、支援者など周りを頼りながら一緒に考えてもらったり、振り返りを実施したりするのも良い手段かもしれません。
統合失調症といっても症状は人それぞれ
統合失調症だから必ず、この症状がある!というわけではありません。
まずは自分の症状がどういったものがあるか知る必要があります。ストレスがあまりかかっていないと問題ないが、精神的に不安定になってくると混乱しやすいとか、大勢の人がいる前だと周りに見られている感じがするとか・・・。どういった時にどんな症状が出るのかを分析しておくことで、自分でも対処ができるようになります。自分の症状や特性が分かると、主治医にも正しい情報を伝えることができ、適切な治療が受けられます。また、特性を正しく理解していると、職場にも適切な配慮を求めることができるので、安心材料になり落ち着いて働くことができるでしょう。
病気に対する理解を深め、職場でのコミュニケーションを大切にすることが、統合失調症を抱える人々が働き続けるためにはとても重要です。
周囲の理解とサポート、そして本人の努力によって、働きやすい環境を実現することは可能です。もし、あなたがなにか悩んでいるのであれば、一人で抱え込まずに、周りの人に相談したり、専門機関に相談したりしてみてくださいね!
参考:国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター、大塚製薬 すまいるナビゲーター