【睡眠障害(不眠)】睡眠の悩みを解決するために自宅でできる生活習慣をご紹介
梅雨入りして段々と気温も高くなり、寝苦しい夜がやってくるようになりましたね。
就労移行支援 ワンモアではメンタルに不調がある方の就労支援を行っており、利用者様に対して定期的に「最近、体調はどうですか?」と体調の確認をしています。そのときによく聞くのは、「最近眠れなくて・・・」という睡眠の悩みです。私たち支援者は「睡眠」を、体調を確認するためのバローメーターの一つだと考えており、睡眠に関する心理教育や睡眠を改善するためのアドバイスを行うことがあります。そこで今回は、”不眠”や”睡眠障害”と呼ばれる睡眠の悩みについて解説し、睡眠のリズムを整えるために自宅で行える工夫や、ワンモアで行っている支援についてご紹介します。
<今回の内容>
不眠や睡眠障害ってそもそも何?~睡眠の悩みは人それぞれ~
✓睡眠が持っている大切な機能
✓睡眠の悩みのパターンと名称
睡眠のリズムを整えるためにできる工夫
✓朝に行う睡眠の工夫
✓昼に行う睡眠の工夫
✓夜に行う睡眠の工夫
就労移行支援ワンモアでできる睡眠の工夫
✓生活記録表で生活リズムをモニタリング
✓活動量を測る専門の装置を用いて生活リズムをモニタリング
不眠や睡眠障害ってそもそも何?~睡眠の悩みは人それぞれ~
一言に「眠れない」と言っても、その特徴は人それぞれです。また、「自分はよく眠れていないのでは?」と必要以上に心配してしまうケースも少なくありません。この項では、睡眠が持っている役割と睡眠の悩みのパターンについてご紹介します。
睡眠が持っている大切な機能
睡眠には、心身の疲労を回復したり、記憶を整理したりする役割があると言われています。しかし、ほとんどの方は何らかの睡眠に関する不満や悩みを持っているのではないでしょうか?睡眠不足は、疲れやすさやイライラ感によって日中活動の質を低下させたり、肥満・糖尿病・高血圧やうつ病などの心身の不調を招いたりすると言われています。そのため、健康と日中のパフォーマンスを保つためには、睡眠時間の確保と質の良い睡眠が重要になります。
このような言い方をすると「もしかして自分も不眠症なのでは?」と感じた方がいらっしゃるかもしれません。しかし、「健康のためには〇時間以上眠らなければいけない」「〇時間より睡眠時間が短い場合は不眠症だ」のような決まりがあるわけではありません。心配しすぎて余計に眠れなくなる、というケースもあります。どうぞお気軽に読み進めてみてください。
🛏不眠症については、「不眠症と思い込み」(https://www.1more.jp/column/409/)でもご紹介しています。
睡眠の悩みのパターンと名称
ここでは、睡眠の悩みでも特に「不眠」と呼ばれる悩みを中心にご紹介します。一つ知っておいてほしいことは、一時的な不眠は健康な人にも起こるものです。これらの症状が現れたからと言って「自分は不眠症なんだ」と必ずしも感じる必要はありません。しかし、これらの症状が頻繁に(例えば週の半分以上)、長期間(例えば一か月以上)現れていたり、日中の活動に支障を来していたり(例えば仕事中に居眠りをしてしまう)する場合には、生活習慣の見直しが必要かもしれません。
<睡眠障害(不眠)の名称と意味>
🛏入眠障害・・・なかなか寝付けない
🛏中途覚醒・・・夜中に何度も目が覚める
🛏早朝覚醒・・・早朝に目が覚めて二度寝出来なくなる
🛏熟睡障害・・・熟睡感が得られない
その他にも、夜間の睡眠は十分に取れているはずなのに日中の眠気によって学業や仕事に支障が出てしまう過眠症、繰り返しの夜更かしや夜勤の仕事などによって体内時計にズレが生じてしまう概日リズム睡眠障害などの名称があり、専門的にはもっと細かく分類することが出来ます。これらの名前を覚えておく必要はありませんが、主治医への相談や専門外来への受診を考えている場合に大切なのは、「眠れない」だけではなく「どう眠れないのか」を伝えられるようにしておくことです。
睡眠のリズムを整えるためにできる工夫
この項では、睡眠のリズムを整えるために行うと良いとされている工夫を、朝・昼・夜の3パターンに分けてご紹介します。
朝に行う睡眠の工夫
朝に行う工夫の目的は、体内時計をリセットすることです。身体に「今からが朝だよ」と伝えてあげることで、自然と身体が日中は活動モード(交感神経が優位な状態)に、夜は休息モード(副交感神経が優位な状態)になります。この体内時計がリセットされていない状態、例えば、朝の時間になっても日光を浴びずに暗い部屋の中で過ごしていると、身体は今が朝なのか夜なのかわからなくなり、朝起きて夜眠るという睡眠のリズムが崩れることに繋がります。
①太陽の光を浴びる
よく、「朝の時間に散歩しましょう」というアドバイスを耳にしますが、これは外出することで太陽の光を浴びることを促す目的があります。朝の散歩が難しい場合は、カーテンを開けて家の中から太陽の光を浴びるだけでも、効果があります。
②起床時間を一定に保つ
前の晩に寝るのが遅かったり寝つきが悪かったりすると、ついつい起きる時間を後ろ倒しにしてしまいがちですが、体内時計を整えるためには起床時間を一定に保つほうが効果的です。どうしても眠たい場合は、お昼寝をしたりその日の寝る時間を早めたりして調整することがオススメです。
③朝ごはんを食べる
食事を摂ることも、体内時計をリセットするための刺激になると言われています。もともと朝ごはんを食べる習慣がない方は、まずはヨーグルトやおにぎりなど食べやすいものから始めてみるのがオススメです。
昼に行う睡眠の工夫
昼に行う工夫の目的は、適度な疲労感を身体に覚えさせることです。身体に適度な疲労がたまっていると、寝付きが良くなり中途覚醒を減らす効果があります。また、「夜寝るためには昼寝をしてはいけない」と考えている方もいらっしゃるかもしれませんが、時間や環境に気をつけて昼寝をすれば、午後までしっかりとパフォーマンスを保って活動することに繋がります。
①激しい運動は眠る3時間前まで
適度な疲労感のためには、運動を行うこともオススメです。ランニングや筋トレなどの激しい運動は眠る3時間前までに、ストレッチなどの軽い運動は眠る1~2時間前までに行うようにしましょう。眠る直前に運動をすると、身体が活動モード(交感神経が優位な状態)になってしまい、入眠を妨げる原因となります。
②昼寝は15時までに30分以内
夜の睡眠に影響しないために、昼寝は15時までに行い30分以内が良いとされています。また、ベッドで眠ると深い眠りについてしまい30分で起きるのが難しいため、椅子に座って目を閉じたり、机に突っ伏したりして眠るのがオススメです。
夜に行う睡眠の工夫
夜に行う工夫の目的は、体温を下げて身体を休息モード(副交感神経が優位な状態)に切り替えることです。身体をリラックスした状態にしてあげることで、スムーズに眠りにつくことに繋がります。
①眠る2~3時間前にぬるめのお風呂に浸かる
お風呂に入った直後は体温が高く、身体はまだ完全にリラックスした状態ではありません。入浴後、しばらくすると徐々に体温が下がっていき、この時に身体はリラックスした状態になります。
②部屋の明かりを徐々に暗くする
夜間に強い光を浴びることは、体内時計を狂わせると言われています。眠る1~2時間前には、間接照明を使用したり、照明を常夜灯にしたりして少しずつ部屋を暗くしていくと良いでしょう。
③寝る前のカフェイン、スマホ、パソコン作業はNG
人は、覚醒作用のある脳内物質(ヒスタミン)の働きが弱まることで眠気を感じますが、カフェインはこの働きが弱まるのを防ぐ効果があります。そのため、カフェインを含む食べ物(コーヒー、チョコレート、紅茶など)を摂取するのは眠る4~5時間前までにしましょう。また、スマホやパソコンの光も、脳が昼間だと勘違いしてしまい睡眠を妨げると言われています。眠る1~2時間前にはスマホやパソコンは閉じると良いでしょう。
就労移行支援ワンモアでできる睡眠の工夫
さいごに、就労移行支援 ワンモアでの取り組みをご紹介します。ワンモアではプログラムの一部で睡眠に関する心理教育を行ったり、個別で相談に乗りながら一緒に解決策を考えたりしており、場合によっては主治医への相談を促し相談内容を提案することもあります。
生活記録表で生活リズムをモニタリング
ワンモアでは、通所されている方に「生活記録表」を記入してもらっています。生活記録表とは、1日の目標や予定を1時間ごとに記入するカレンダーのような用紙です。後日、実際の1日の様子とその時の気分を記入することで、予定の管理だけではなく時間による気分の変化をモニタリングすることが出来ます。例えば、寝る前に不安感が強くなる、朝はイライラしやすい、ワンモアにいるときは穏やかに過ごせるなど、人によって気分の変化には様々な特徴があります。その変化を記録しておくことで、「土日に外出の予定をたくさん入れると、週明けに体調を崩しやすい」「雨が降ると気分が落ち込みやすい」など、体調に変化が生じる前兆を知ることに繋がります。体調不良の前兆を知っておくことで、予定を調整したり休息の時間を設けてみたりと、事前に対処することが出来るようになります。また、睡眠に困難を感じている方とは、この生活記録表を通して睡眠の振り返りも行っています。例えば、週の前半は夜更かし気味になっている、イベントの数日前から睡眠時間が減りやすいなど、人によって異なる睡眠の特徴を担当スタッフと共有します。睡眠の特徴を知っておくことで、主治医にご自身の睡眠の悩みを正確に伝えることが出来て、より悩みに沿ったお薬の処方に繋がったり、必要な対策を考えたりすることが出来ます。
活動量を測る専門の装置を用いて生活リズムをモニタリング
生活リズムの乱れが気になる方に対しては、大阪公立大学の田中寛之先生にご協力いただき、アクチグラフと呼ばれる腕時計のような装置を身に付けて、活動量や睡眠時間を測定します。「生活記録表」と異なる点として、グラフとして客観的に活動量を計測することができるため、自分では気づかなかった一日の過ごし方の特徴を共有することができます。「夜眠れない」と話される方の中には、日中の活動量が低く疲労を感じられていない、という方も少なくありません。
🛏詳しくは、「生活リズムを自分で振り返ってよりよい生活を!」(https://www.1more.jp/column/292/)をご覧ください。
さいごに
今回は、睡眠障害(不眠)をテーマに、睡眠の持つ役割や質の良い睡眠を手に入れるための生活習慣をご紹介しました。最後まで読んでいただきありがとうございます。
ワンモアでの支援にご興味を持たれた方は、是非お気軽にお問い合わせください。
※このコラムを作成するにあたって、厚生労働省が公開している「健康づくりのための睡眠指針2014」(https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000047221.pdf)、「令和3年度 健康実態調査結果の報告」(https://www.mhlw.go.jp/content/11131500/000904748.pdf)を参考にしています。