MUHOOカウントダウン企画第2回 「法定雇用率の向こう側」その3~障害者雇用においての支援者の関わり方~
仲地:後半その辺について話したいなと思うんですけど、障害者雇用の質への挑戦とか、あとは副題で今回出しました、「質と文化の構築」、その辺に我々はどういうふうに寄与していけるのかを話してみたいなというふうに思いますがね。竹林さんもそのままでいていただいて一緒に話していきたいなというふうに思いますけども、この論点どういう切り口でいきましょうか。
金川:そうですね。最終的には作業療法士として我々が何ができるのかっていう切り口論点にしたいなと思っているので。
仲地:そうですね。話の中で働くということを我々作業療法士はどう捉えるかっていうことで結構重要じゃないですか。ただ就職をさせればいいっていうことでもないし、就職を希望している人に就職を応援すればいいというだけでもないと思うんですね。つまり働くっていうのは本人にとってどういう手段なのかっていうことを感じないといけないじゃないですか。だから働いて職業人としてどういった生活をイメージしてますか、そういうことを感じながらじゃないと作業療法士が行う就労支援できないと思うんですよ。
例えば働くっていうのはお金をもらうっていうことだけじゃないとすると、本人たちが求めている働くっていうことは、どこかに所属して自分も社会の一員としてやっていくんだっていうような価値観が重要、それが言語として表出されることってあんまりないかもしれませんけどね。しっかりそういうこと言う人とかあんまりいないからないけども、じゃあその要素が無しでもいいのかどうかとなってくると話は別だと思うんですよね。
なので本人が働いてどういう生活をしたいのか、その本人の長い生きるということの文脈において職業生活っていうのが、どういうふうな意味合いを持つのかそういうことを感じないといけないそういうふうに思いますけどどうですか。
金川:そうですね。ちょっと竹林さんに聞きたいんですけどね、今回文化としての構築っていうスタンスなんですけど、ざっくりその今の話聞いてて作業療法士がこういった問題にどういうスタンスで関われるのかな、どういう強みで関われるのかなっていうのを、作業療法ってものをすごくやっぱ考えてこられた方の一人としてお伺いをしたいなと個人的には思ってるんですけど。
竹林:そうですね、自分がその臨床の中で思った時は、今仲地くんが言ったみたいに当事者の方ですよね。対象者の方のその代弁者だとかっていうところもあったんですけど、職場に行くとその周りの人たちにもそれぞれ人生が、当事者の方だけのスタンスで関わってるとうまくいかないなっていうのをすごく感じて。とにかく仲良くなって、で話す機会を作って何かあれば、困りごとがあればいつでもメールくださいとか電話くださいみたいな形で、なんか一種の翻訳というか、うまくその間に入れるコミュニケーションツールになれたらなと思って。
本人がすごく頑張ってはくださってるんですけど、でも本人に出来ること得意なことと苦手なことというのはやっぱりあられるので、その苦手なことを頑張ってできるようにっていうわけではなくてその環境全体の中でその人の得意なところをうまく、活かせるような変換機になれたらなっていうのは2年目3年目の時ですかね、なんか信金に行ったんですよ。信用金庫に行って一番最初行った時すごいこれはアウェイだなみたいな感じだったんですけど。
でもその中でお話ししてる中ですごく感じたことですかね。やっぱり話してると皆さん個々にいろいろ思いがあられて、その思いをどこで紡ぐのかなみたいなところがやっぱり僕たち作業療法士の仕事なのかなってその時は感じました。
金川:ありがとうございます。そういった現場に行ったりとか就労支援をしたっていう経験はおありなんですね。
竹林:大学病院に行った時はちょうどその時の教授がその高次脳機能障害に対してすごく力を入れてらして、僕はすごくラッキーだったのは午後半休取って行ってらっしゃいみたいな、出張扱いでもう本当に2年目3年目で何もできないんですけど、とりあえず見てきなさいっていうところで担当の方と一緒にハローワーク行かせていただいたりだとか、職場行かしていただいたり。そこで本当に拙劣に感じたものではあるんですけどそういう風に思いました当時。
金川:現場に入ってみると、見えることってあると思うんですよね。今、竹林さんのお話聞いてて、私も実はその就労支援の中で大事にしてる部分っていうのはやっぱ環境なんですよね。
今回「文化と質の構築」っていうところなんですけども、私自身の見解も述べさせていただければと思うんですが、やっぱり今日言ってたように異文化と異文化は対立が起きるんですよね。その対立が起るときに何が重要かって、最終的に持っていきたいところは相互理解だと私は思ってるんですよね。相互理解でも相互を理解するって時には相互の翻訳する人が絶対に必要だと思って、相互の文化を。
例えば単純にここにこれボールペンなんですけど、これをある人はシャープペンっていうし、ある人はもしかしたらリンゴっていう言葉で喋るかもしれない。リンゴとシャーペンって言っても全然折り合わないじゃないですか。じゃあ向こうはリンゴって言うらしいよ、こっちはシャーペンって言うらしいよっていうようなことを伝えてあげたりとか、そういった人が重要なのかなって思っているんですよね。
この相互理解って結構、異文化同士が折り合う時に結構難しい問題ではあると思っていて。だからまず現場に入った時にはやっぱ環境、ご本人個人だけじゃなく、実は周りもちゃんと見るっていうのが大事で、作業療法士としてはそこも巻き込んでいく、そこに対する働きかけもするっていう視点が大事だと思っているんですよね。
相互理解を生み出すために我々に何ができるかっていうと、会社の方ってその病気を持たれた方が来た時にその病気障害像がわからないんですよね。我々はその像に対して何をしたらいいかがわからない、欲しいんですよ情報が。その時に実はこの方にはこういうことが必要でこういったフォローをしてあげるだけで働きやすくなります。皆さんこういう関わりをしていただきたいですって言うだけで、そうなんですねっていう理解の発信スタートが切れるんですよ。
もし居なかったら何この起きてる現象、なんでこの人こんなこと言うのやるの、あんなことされたら困るよねみたいな話で終わっちゃう、要はコンフリクトのまま、対立のままで終わっちゃうんですよね。我々ってそういう機能の分析のスペシャリストで機能分析したことをこうそれが何で起きてるのかって活動の状態につなげたりっていうところがスペシャリストだと思うので、我々が現場に入った時にそういった人たちに今みたいな現象こういう理由で起きていてとかっていう説明をする。これ一個だけでもコンフリクト対立を解消して相互理解につなげるというところできると思うので、やっぱり作業療法士としての専門性ってそういうことだけでも活きるんじゃないかなっていうふうには個人的には思ってます。
仲地:翻訳機とか、僕も本当にそういう言い方で必要性を言います。翻訳する人が必要です。これは同じ日本語喋ってるじゃないかっていうことも全く違うことで、Aさん語、Bさん語、Cさん語っていう人それぞれの単語の選び方や文脈がやっぱあるわけですよね。だから本当にそれを通訳するっていう人は必要です。
本当にこれが作業療法の専門性とどうつながるかとか、そういうことも必要だし、あとは環境に対する働きかけって本当に重要だけど、主にその当事者の仕事の、例えば指示をする人とかフォローする人とか、その担当の人がうまく一人一人に興味関心を持ってもらえるようにその人にアプローチするっていうのを結構重要視してます。
だから担当者が障害者雇用の担当になった、もうめんどくさいみたいな感じだとやはりいいパフォーマンス発揮しませんし、一人一人、人として関心を持ってもらうということを重視したりとかこの人ってこういうところあるんですよとか、あとは例えばトカゲの話したらこの人めっちゃ喜びますよって言ってみたりとか、AKB好きなんですよとか、シンプルなことだけど一人一人の好きなことをどれだけ知ってくれるかとかそういう風に関心を向けてもらえるように働きかけていうのは強く意識しますね。
金川:どうですか今のお話聞いて
竹林:今すごい伺ってて思ったのは職場のお二人の話聞いて思ったんですけど、その職場の担当者の方とかその職場自体がその人に対してどう働いて欲しいかみたいなところの像が見えたらすごいやりやすいんだろうなって思って。
やっぱり届けたい働き方というかなんて言うんですかね、一緒に働くためのその方向性とかなんかそういうビジョンを作ってもらうために、まずそれこそ環境という言葉使われましたし、担当者って言葉使われたのかなと。だからまずそのクライアントはもちろん対象者の方なんですけどでもその職場全体が、いわゆる僕たちのそのクライアントになるのかなっていう風に今すごい思いました。
だからリハビリテーション、身障のリハビリテーションだとクライアント対象者の方にやっぱりなるんですけどじゃなくて、その空間そのものをなんかクライアントとして捉えてのその狭い範囲だけじゃなくてもっと包括的に広くその全体を見ていろいろな方の向かう方向をのベクトルを合わせるみたいな仕事が。
でももしかすると環境に対してアプローチできる仕事って見てみると少ないのかもしれないですね。その業態全体でも作業療法ってそういう強みがもしかしたらあるのかもしれないです。
仲地:なるほど。環境に働きかけるって一言で言っちゃうけども、今日のテーマで言うと、環境に働きかける、いわゆる企業に働きかけるっていうのは企業文化を企業が醸成していくその一助に我々もなれればいいなっていうことを私としては含んでるんですね。
だから今日、何回か繰り返してるように障害者雇用って別にその障害者と言われる当事者を雇ってあげましょうっていうことでもないし、これ全部我が事として当事者のためにもなるし、あとは企業のためにもしていかないといけない。そのためには企業文化を醸成していくっていうようなことも自分たちは考えていかないといけないそういうふうに思ってますけどね。
金川:そうですよね。さっき言った対立とか苦労をするっていうところを乗り越えていくとノウハウになるので、多分それが文化構築でその時に我々作業療法士がいることで、今みたいなところが進んでいくというところにはなるのかなっていうのはずっと思っているので、やっていくことが文化構築につながってるんだって思いながらやるのと、今目の前の人の支援をするんだってなったら全然違うのでやり方が。
なのでどっちかと私は仲地さんがおっしゃってるように、我々はやってる事っていうのは、そういう企業の文化を作る仕事をしてるんだぐらいにやっていくと、多分じゃあもうちょっと環境も見てみようか、ご本人も見てみようかみたいな話にはなりやすいのかなって思いますね。
仲地:なるほど、はい。そうですね、作業療法士っていうこと作業療法っていうテクニカルな話じゃなくて、我々ってその当事者本人の生きるということにおいて働くということがどういうことかっていうことにも関わるしあとはその企業においてこの障害者を雇用するっていうことが企業文化にどう作用するかということを長い目で見るっていうその文脈の中で把握するという、いわゆる我々の哲学みたいなところにもマッチするのかなと思いながら聞いてましたけども。
はいなんかちょっとエンジンかかってきたところではあるんですけども、お時間なのでちょっとそろそろですね、締めに入っていきたいなというふうに思います。
どうでしょう今日ご覧の皆さん。障害者雇用が今後、法定雇用率が上がっていく中で企業に雇用される障害当事者の方々増えていくのはもう間違いありません。そういった時に企業がどういう思いで障害者雇用をしたら良いと思いましたでしょうか。そういうことを今日考えるきっかけになってたらいいなというふうに思います。
最後にですね皆さんから一言ずついただいてちょっと締めに参りたいなというふうに思います。
金川:皆さん、お付き合いいただきましてありがとうございます。難しい用語とか、いっぱい出てきたんじゃないかなっていうふうに思うんですけども、一番私的に伝えたかったのは、世の中で起きている物事っていうものをちゃんと見て、それが何で起きているのかなとかっていうものを知る、情報収集いっぱいして、そのものの本質っていうものを理解して課題が出てくるはずなんですよね。その課題を理解して、その課題に対して我々作業療法士とか自分っていうのが何ができるのかなっていう風に考えていたきっかけにしてもらえたらなっていうふうに思っていたんですね。
なので皆さんの中で障害者雇用って興味あったけど、こんなこと起きてるんだとか、あの話聞いたことあるけどなんか別にいいじゃんと思ってた、でもこういう見方もあるんじゃないかなみたいなことを感じてもらうきっかけになればいいかなっていう風に思います。最後に発信したように、作業療法士っていうのはやっぱり人と環境、作業ね、この辺りが見れるっていうのが私はすごく専門性だと思ってるので、自分たちが持ってる技術っていうものがやはり日本の会社、もしくは日本の文化を構築していくってところにもつながる、そんなスタンスで自信持ってみんなでやっていけたらななんていう風に思ってます。
今日はご清聴ありがとうございました。
竹林:今日はすごい素敵なお話を伺えて非常にありがたかったなというふうに思ってます。今日話を伺って本当に思ったことは領域とか病期にかかわらず作業療法士ならこういう話ってしっかり知っておいた方が絶対いいなというふうに思いました。確か台湾だったと思うんですけど、職業療法っていう名前でOccupational Therapyが訳されているはずなんですよね。
いろんな格言の中にも働くことは生きることだとかそういう仕事と生きるっていうところをすごく結びつけることもあって、本当にたくさんあると思います。なのでぜひ多くの人にお二人の話をはじめとして就労支援の話に興味持っていただきたいですし、この分野で働くOTさんがしっかりたくさん増えて、しかもみんな裕福になってくれたら嬉しいなっていうふうに思ってます。
今日はどうもありがとうございました。
仲地:はいありがとうございます、じゃあ最後にですね、私の方からになりますけども、今日皆さん聞いていただいてありがとうございます。どうでしたでしょうか。私は冒頭で申し上げました通り、今日のこういう障害者雇用に関してのスタンスっていうのは一緒に働くっていうことが相互理解の役に立つと、相互理解の非常に優れた手段であるというふうに思ってますので、これから共生社会ですね、いろんな人が共に生きる社会っていうのを作るにはいろんな人たちが一緒に働く、これはもちろん障害者だけではないです。
今SDGsの文脈の中で誰一人取り残さないとか言いますけども、じゃあ誰が取り残されやすい人なのか、それは高齢者であり子供であり障害者であると思うんですね。だからそういうのをこう分けるということじゃなくて、どう一緒にいるか、どう一緒に同じことをやるか、そういうことを考えていければいいのかなというふうに思ってます。
私はそれがね、一緒に働くということが一番いい手段であると思ってるということです。だから一緒にあるんだっていうようなことですけども、もっと言えば豊かな文化を作っていく精神的な豊かさって何なのか、これからもうその金銭的な価値だけじゃない豊かさっていうことを考えていかないといけない中で、この合理性効率性だけを求めた雇用のあり方っていうことでいいのかどうかその辺は皆さんに今後考えていただきたいなというふうに思っているところです。
今日は皆さんどうもお付き合いありがとうございました。
この企画はですねMUHOOというイベントのカウントダウン企画として行われました。
11月にはぜひ沖縄学会、そしてその初日の晩には今日後ろにポスターを貼ってありますMUHOOという、今全国で活躍しているOTの方々が一堂に会する学術的交流イベントでございますので、ぜひ皆さんその場でお会いしたいと思います。今日はどうも皆さんご参加ありがとうございました。そしてスピーカーの皆さんどうもありがとうございました。
金川:ありがとうございました。
仲地:11月沖縄で会いましょう、ありがとうございました。