ADHDさんの働くときに必要なサポートあるある~後編~
以前アスペルガーの方のお仕事あるあるを前編・後編でお伝えしましたが、今回はADHDについて、就労移行支援スタッフにインタビューを行いました。
今回インタビューに答えてくれたのは、ワンモアの法人理事である金川善衛さんです。精神科デイケアで5年半勤務された後、就労移行支援事業を15年。その後就労後支援(ジョブコーチ事業)運営と実践に従事されており、2023年4月よりワンモアの法人理事として人材育成や経営戦略にも携わっておられます。今までのご経験を踏まえてADHDの特性や仕事での困りごとなどについてお話いただきました。
▼前編を読まれていない方はこちらから
https://www.1more.jp/column/688/
【今回の内容】
✓ADHDさんの働く際に必要なサポート
1)指示は1つずつ、分かりやすくシンプルに
2)ルールを明確化しておく
3)業務内容の視覚化
✓自分にあった方法を知ろう
✓自分の強みを最大限に発揮するために
以下
金川さん→👨🏽🦱
インタビュワー(ワンモアスタッフ)→👩🏻
ADHDさんの働く際に必要なサポート
1)指示は1つずつ、分かりやすくシンプルに
👩🏻「前回はADHDについて、3つのタイプがあることやそれぞれの特性を正しく知ることが大切だと分かりました。ただ、どのタイプも仕事で困る場面も多いと思うのですが、職場でどんなサポートがあれば働きやすいのでしょうか」
👨🏽🦱「抽象的な指示や複数の指示は混乱される方も多いので、“指示は具体的に、言葉も分かりやすくシンプルに”というのはとても大切だと思います。
👩🏻「確かに複数指示を受けると、“何から手を付けていいか分からない”、“指示を忘れた”という方が実際に多いですね」
👨🏽🦱「なので1つずつ指示をしてもらうとタスクを忘れることなく取り組むことができると思います。また、1つずつの指示が難しいようであれば、メールやチャットなど形に残るようにしたり、優先順位をつけてもらうという方法もあります。職場の体制や仕事内容によってこの辺りは職場と相談してもらうといいですね」
2)ルールを明確化しておく
👨🏽🦱「衝動性・多動性が優位の方だったら、ちゃんとルール作ることも大事ですね」
👩🏻「ルールですか?」
👨🏽🦱「例えば、 “必ずAの手順を踏んでからBの業務にうつる”とか“ここに入力すると正しく計算できないから、ここには何も入力しない”とか」
👩🏻「なるほど」
👨🏽🦱「本人は良かれと思って取り組んでいることが、職場の方からすると“どうして頼んでもいないことを勝手にするの?”とかマイナスに捉えられることってよくあることで。でも本人は何が悪いか分かっていない場合も多いんです。 明確にルールを決めておくことで、本人も動きやすくなりますからね」
3)業務内容の視覚化
👨🏽🦱「あとはどのタイプにも言えることですが、本人が後で確認ができるように、手順書やマニュアルみたいなものがあると良いと思います。特にチェックリストのような、何をやったかが分かるものがいいですね。やっぱり忘れが多いので、何をやったか、何が終わっていないのかなどチェックリストを提案したことはありますね」
👩🏻「なるほど。そのチェックリストはご本人と一緒に作成して、“こういう項目が必要だよね”とお互い確認しながら作成していくんですか?」
👨🏽🦱「そうそう。実際にその職場でご本人の業務を見て、その中で本人が苦手とするチェック項目とかやり忘れがないかっていうのを本人と一緒に作って、職場に貼らせてもらう時もありましたし、ポケットにしまえるようなパターンのものも作ったことがありますね」
自分に合った方法を知ろう
👩🏻「ポケットにしまう…。実はワンモアを利用されている方で、紙をポケットに入れていてもすぐにクシャクシャになってしまうことや、ポケットに入れたことを忘れてしまっていることがあったのですが…」
👨🏽🦱「ありますよね。そういう方にはポケットタイプは向いてないと思います。その場合は、壁に貼るとか、目につくところに大きく書くっていう方法もありますね。」
👨🏽🦱「私の子どももそうなんですけど、発達の診断を受けてはいないけど学校で忘れ物がないように、事前に準備するものを書き出して、鞄に入れたらチェックをつけているんですよね。子どもの頃、親に「あれも忘れずに持っていくのよ」「これもしときなさいよ」って言われたことないですか?」
👩🏻「あぁ~よくありましたね。でもその時は他のことに夢中で、言われたことを忘れていることが多かったです(笑)」
👨🏽🦱「そうですよね。でもその口頭で言われたことをメモに残しておいたり、チェックリストの項目にあらかじめいれておいたりすると忘れは防げますよね」
👩🏻「そうですね。私の場合はメモをもらってもすぐ無くすので、勉強机のところにチェックリストを貼ってもらっていました」
👨🏽🦱「それって“その人がどんな方法だったら忘れずに済むか”を考えられているんですよね。ADHDさんのチェックリストも、“壁に貼った方が良いのか”“ポケットに入れていつでも確認できるようにする方がいいのか”を考えるので、その辺は一緒かなというか…。私達の日常の中でも同じようなことってよくあるのかなって思いますよね」
👩🏻「本人が“これだったら使いやすい”、“ここに貼っていたら覚えていられるからこっちにしよう”とか、本人の中でやりやすい方法を見つけていくことが大切なんですね」
👨🏽🦱「そうなんです。注意力に課題がある時点でポケットに入れていると、仰る通り忘れることってよくあるんですよ。なので、その場合は作業する場所の目の前に貼るとか。貼る場所も大事なんです。同じ貼るのでも、作業している時にあまり目につかないところに貼っても意味がないですよね。なので、必ず目に入るとこに貼ることを会社の方には提案していますね」
👩🏻「不注意優位で同じ“指示を忘れやすい”という特性でも、そこを補う手段や方法って人それぞれなんですね。」
自分の強みを最大限に発揮するために
👨🏽🦱「そうですね。前回お話しした、自分の特性を正しく理解しておくということが、自分の強みを最大限に発揮することに繋がるんですよね。“自分はここが強みで、ここは課題だ”と正しく理解していたら、課題点に対して①自分で努力できること②周囲のサポートを受けたほうがいいことも考えやすいと思うんです」
👩🏻「例えば、“指示された通りに取り組むことが得意で、口頭指示だけだと忘れてしまうのが課題”だったとしたら、<自分で努力できること>は受けた指示は必ずメモをとる。一度に複数の内容を言われると混乱し、メモが追い付かないので、<周囲のサポート>は職場の方に1つずつ具体的に指示を出してもらうとかですかね?」
👨🏽🦱「いいですね。周囲にサポートを求めてばかりだと、自分の課題なのに、他人任せになってしまい、職場の方は対応しきれないので、課題点を補うために自分で努力できることは必要不可欠です。その中で、自分ひとりの努力ではどうしようも出来ないことを周囲にサポートしてもらう。そうすることで、より自分の強みを活かした働き方ができると思いませんか?」
今回は、ADHDさんの働くために必要なサポートについてお話を伺いました。必要なサポートを受けるにあたって、自分の特性を正しく理解して、苦手なところをどういった手段で補っていくのか。自分に合った方法は何なのか、自分で努力できる範囲はどのくらいで、どんな周囲のサポートがあると、より強みを活かした働きができるのかを考える機会になったと思います。
1人で考えるのは難しいなと思った画面越しのあなた。ぜひ周りの方の意見を聞いたり、ワンモアなどの支援機関をぜひ活用してみてください。
【過去の関連コラム】
▼アスペルガーさんのお仕事あるある~前編~
▼アスペルガーさんの働く準備とサポートあるある~後編~
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